「ライバルの居ぬ間のG1制覇〜宝塚記念」の巻

 前回の最後で、宝塚の舞台でスズカとフクキタルが競演する予定と書いたが、残念ながらフクキタルは舞台に上がらないことになった。また、香港以来スズカのパートナーだった武豊はスズカではなく空気溝(スズカが沸かした天皇賞・秋のヒロイン)のパートナーとなった。そのような因縁があって、宝塚の舞台ではいままでフクキタルとのコンビでお馴染みだった南井克巳がスズカとコンビを組むことになった。南井はスズカと同じ事務所のゴーイングスズカ(これもスズカなんだが、本稿では今までサイレンススズカのことをスズカと読んできたので「スズカ」と書くとサイレンススズカのことを差すことにする)ともずっとコンビを組んで来たが、スズカ事務所の要請でサイレンススズカとコンビを組むことになった。

 なんだかんだで、ライバルフクキタルのパートナーだった南井とのコンビで舞台にあがるのである。そして、フクキタルは舞台の上にはいない。どうにもものたりない。久しぶりに役者の揃った舞台への登場なのにまさに「画竜点晴を欠く」である。

 スズカといえば「ゲート潜り」で有名だが、今回はスズカがゲートにはいる前にお笑いというイメージのあまり無い役者メジロブライトがゲートで立ち上がってしまう。「ブライトがやっちゃったら俺の出番はないじゃないの」とスズカ。

 しかし、スタートすると例によって馬鹿逃げである。これが私の生きる道と言わんばかりの馬鹿逃げ。ターフビジョンに姿が写るたびに大歓声。

 しかし、4コーナーに差し掛かると下がってくる。以前のスズカならこのままずるずる後退というのがパターンだったが、今回は違う。ゴールを駆け抜けるまで粘ったのだ。まるで、武豊とのコンビの時のように。役者の揃うG1競争を初制覇。

 思えば、フクキタルにG1を勝たせたのは南井である。そして、今回スズカにG1を勝たせたのも南井。こういうお笑い系の馬でもG1を勝てるということを実証する男、それが南井克巳である。

 フクキタルとの競演こそならなかったが、G1を勝ってお笑いだけではなく主役もつとまることも証明された。かくしてG1という勲章を手にいれ、スズカは師匠のツインターボをも超える存在となったのであった。


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