マイルチャンピオンシップ之巻

 今度の舞台はマイルチャンピオンシップというものだ。ツインターボ師匠はこういう短距離の舞台にあがることはなかったが、長距離舞台だと師匠にかないそうにないので、スズカは師匠とはひと味違う舞台にあがることにしたのだ。

 ここでは、スズカと同期の女優キョウエイマーチと競演することになった。キョウエイマーチは女性ながらスズカと同じ馬鹿逃げを持ちネタとする芸人で、同期の中ではサニーブライアンに次ぐライバルである。ただし、このライバルたちはお笑い芸人というよりはお笑いセンスも持っているが主役もつとまる俳優ないしは女優という位置づけにあり、スズカのようなお笑い一筋の芸人とは少しタイプが違うが。

 今回もスズカはスタートしたら馬鹿逃げを打とうとする。しかし、「そうはさせないわよ」とキョウエイマーチ。結局キョウエイマーチが鼻を切る。しかし、スズカも負けてはいられない。天皇賞で味わった場内を沸かすことの快感をもう一度味わいたい。横からキョウエイマーチにぴったりと並んでゆく。

 しかし、その2頭のすぐ後ろをいく馬が一頭いた。「おいらも仲間にいれてくれよ」といいながらついてくるのは、巨体をウリにしている芸人ヒシアケボノ。巨体をウリにしているため横綱曙関からとった芸名を名乗っている芸人だ。この3頭で場内を沸かせることとなる。

 ゴール前ではスズカはアケボノとともにお約束のようにずるずる後退。しかし、キョウエイマーチは最後まで粘ってしまい、主役のタイキシャトルとともに舞台の幕が降りるまでスポットライトを浴びていた。

 「笑いには落ちがなきゃいけないのさ。」レース後にヒシアケボノにそう話しかけたスズカは、鞍がずれていたことが判明。上演中観客の中にそれに気づいていた人は残念ながらいなかった。「もっとハデにやればこれもネタにできたのにな。」

 


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