弥生賞之巻

 初舞台は何とか無難に切り抜けることができた。しかし、これからがスズカにとって真の芸の見せ所である。

 スズカにとって初の大舞台は97年の弥生賞。期待の新人タレントが芸を競い合う舞台である。

 まず、スズカは持ちネタである「ゲート潜り」を披露した。係員がゲートに入れようとするといやがってなかなか入らない。このような前置きがあるからこそ、芸は盛り上がるのだ。そして何とかゲートに入ると必殺技の「ゲート潜り」。共演者上村騎手を振り落とすというおまけ付き。見事なまでの演技だ。さすが若手のホープ。ゲートが壊れ外枠発走に。

 そして、スタートの合図があると、またしても見せてくれる。今度は2秒ぐらいの「出遅れ」。場内は彼の芸にどっと沸く。

 レース終了後審査員から彼に「ゲート再審査」の称号が与えられた。皐月賞には出れないがスズカはいう。

「まいっか。俺の目指す舞台は皐月賞なんかではなく、新人の最高の舞台『日本ダービー』だもんね。」

 というわけで、プリンシパルSを勝ち大舞台への切符を手にした。


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