昨年はコントレイルが無敗のままダービーを勝ち、無敗のまま三冠馬となった。今年も無敗で皐月賞を勝って日本ダービーに臨む馬がいる。エフフォーリアである。前売りで単勝1倍台と、かなり人気を集めている。
だが、エフフォーリアには不安材料がある。その不安材料とは鞍上である。別に横山武史騎手が下手だというわけではない。これが普通のGIなら、昨年の関東リーディングジョッキーが乗っているのだから何の問題もないだろう。しかし、日本ダービーは特別なレースである。場内の雰囲気が普段とは全く異なる。騎手にとっては重々しく感じられる雰囲気だろう。5年目で22歳の経験の少ない若手騎手では、雰囲気に呑まれてしまうために厳しいと思われる。ここで勝つようなら戦後最年少のダービージョッキーになるわけだが、そう簡単に行くものではない。戦時中に前田長吉騎手が20歳でダービーを勝っているが、78年前だと時代が違いすぎるし、そもそも当時は騎手が兵役に取られて手薄だったという特殊事情がある。
もし、横山武史がダービーを制する様であればもの凄い快挙であり大いに祝福してあげたいが、単勝1倍台の人気だと騎手にとってもプレッシャーも凄いだろうし、馬券を買う側にとっても危険である。ダービーは18頭立てになってからしばらくは1番人気馬が最低でも連に絡む堅めのレースだったが、近年はそうでもなくなってきた。今年は1番人気が危険な人気馬なので荒れると見た。そこで、馬券的な妙味の薄いエフフォーリアは馬の強さは認めつつも消すこととする。
ダービーは騎手が前走からの継続騎乗の馬が連に絡むことが多く、過去10年の連対馬にテン乗りだった馬はいない。そこで、エフフォーリアを除く継続騎乗の馬を狙うこととしよう。タイトルホルダー、ワンダフルタウン、ヴィクティファルス、サトノレイナスがそれに該当する。
この中で本命とするのは皐月賞2着馬タイトルホルダーだ。皐月賞ではエフフォーリアに3馬身差を付けられたが、連は確保した。エフフォーリアは前述通り危険な人気馬なので消すこととするが、やはりダービーは皐月賞組が優位である。また、弥生賞勝ち馬は皐月賞よりもダービーでの活躍が多いこともあり、期待できそうだ。
対抗は青葉賞馬ワンダフルタウン。当初はこの馬を本命にしようかと思ったのだが、青葉賞勝ち馬はダービーを勝てていないのでちょっと割り引いた。何故かダービー勝ち馬を出していない青葉賞だが、ダービーと同じ東京芝2400mの重賞を勝っているという強みがある。皐月賞組を逆転する可能性があるとしたらこの馬だ。
単穴はヴィクティファルス。皐月賞では重馬場に強そうだという理由で本命に押したが、9着に敗れた。重馬場のスプリングSで激走した反動が出た様である。今回は立て直してくるだろうし、時計のかかる展開になれば怖い存在だ。脚質的にも直線の長い府中が合っているだろう。
牝馬ながらオークスではなくダービーに挑戦してきたサトノレイナスは、それらの馬に次ぐ評価とする。連は外していない馬だしルメール騎手が鞍上というのも心強いが、さすがにウオッカ級に強い馬でなければ牝馬のダービー制覇は厳しいだろう。実はウオッカ級に強い馬だったという可能性もあるわけだから押さえてはおく。
買い目としては、上記4頭の馬連が中心だが、印上位3頭の単勝も勝っておこう。エフフォーリアだけではなくサトノレイナスもある意味過剰人気と言えるので、その2頭以外の単勝オッズが美味しい配当になっているからである。
b | 枠 | 馬 | 印 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | 斤量 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | エフフォーリア | 牡3 | 横山武史 | 57 | ||
1 | 2 | ▲ | ヴィクティファルス | 牡3 | 池添謙一 | 57 | |
2 | 3 | タイムトゥヘヴン | 牡3 | *石橋脩 | 57 | ||
2 | 4 | レッドジェネシス | 牡3 | *横山典弘 | 57 | ||
3 | 5 | ディープモンスター | 牡3 | *武豊 | 57 | ||
3 | 6 | バジオウ | 牡3 | *大野拓弥 | 57 | ||
4 | 7 | グラティアス | 牡3 | *松山弘平 | 57 | ||
4 | 8 | ヨーホーレイク | 牡3 | *川田将雅 | 57 | ||
5 | 9 | ラーゴム | 牡3 | *浜中俊 | 57 | ||
5 | 10 | シャフリヤール | 牡3 | *福永祐一 | 57 | ||
6 | 11 | ステラヴェローチェ | 牡3 | 吉田隼人 | 57 | ||
6 | 12 | ○ | ワンダフルタウン | 牡3 | 和田竜二 | 57 | |
7 | 13 | グレートマジシャン | 牡3 | *戸崎圭太 | 57 | ||
7 | 14 | ◎ | タイトルホルダー | 牡3 | 田辺裕信 | 57 | |
8 | 15 | アドマイヤハダル | 牡3 | *M.デムー | 57 | ||
8 | 16 | △ | サトノレイナス | 牝3 | C.ルメー | 55 | |
8 | 17 | バスラットレオン | 牡3 | 藤岡佑介 | 57 |
残り200mでエフフォーリアが先頭に立つと、あとは後続を突き離して勝つだけに思えたが、内からシャフリヤールがもの凄い脚で差してきた。最後はこの2頭がほぼ同時にゴールインしたが、ゴール板前ではわずかに10cmほどシャフリヤールの方が前に出ていた。
というわけでシャフリヤールの勝利である。「ダービーでは騎手が乗り替わった馬は連に絡まない」というデータから消した馬だ。ただ、鞍上の福永はもともとシャフリヤールに乗っていて、前走の毎日杯だけ川田に乗り替わったのが元の騎手に戻ったのであった(福永は毎日杯では自身が乗って日米オークスを制したシーザリオの仔ルペルカーリアに騎乗)。データからは過去10年の連対馬は全て前走からの継続騎乗なのだが、全くの初騎乗の騎手ではなく元の主戦騎手に戻った場合は勝負になるということだった。この馬も押さえておかなかったことが悔やまれる。押さえてたら単勝だけは当たった筈だ。
シャフリヤールはわずか4戦目でのダービー制覇。毎日杯をレコード勝ちした後は、皐月賞をパスしてダービー一本に照準を絞った馬だ。直線でなかなか前が開かずに苦労したが、福永のコメントによると、結果的にそこで脚を溜めることになったのが良かったとのことだ。最後に必死で追っていた福永の心境を勝手に推測すると「俺がキングヘイローの時に勝てなかったんだから、こんな若い奴に勝たれてたまるか」「エフフォーリアがこのまま勝って菊も勝っちゃうと、コントレイルの偉大な記録が目立たなくなる」ってとこだろうか。福永は13年のダービーでエピファネイアに騎乗し、勝ったと思ったところをもの凄い脚で追ってきたキズナに最後に交わされた。今度はそのエピファネイア産駒であるエフフォーリアに対して、あの時のキズナと同じ様な渾身の追い込みで差し切った。それにしても福永はワグネリアンでダービー初勝利を挙げると、4年で3度目のダービー制覇である。なかなかダービーを勝てなかった騎手だが、一度勝ったら覚醒したようだ。
2着はエフフォーリア。鞍上の横山武史もまだ5年目の22歳ということを考えるとよく頑張った。重賞で1番人気馬に乗るのがダービーが初めてというのはプレッシャーだっただろうが、最内枠から1コーナーで果敢に好位に取り付き、その後折り合いを付け、直線では開いたところをうまく抜け出してきた。抜け出した後、外に寄れた距離ロスが最後に響いたのかもしれないが、無理に矯正したら馬が走る気を無くしたかもしれない。ちなみに、横からの映像ではわかりにくいかもしれないが、勝ったシャフリヤールは内に入れたのではなく真っすぐ走っていて、エフフォーリアが外に寄せていたので結果的に内を通ることになっただけである。エフフォーリアの父エピファネイア、父の父シンボリクリスエス、母の父ハーツクライは全てダービー2着馬である。ダービーでは惜しいところまでは行くが勝てない血統なのだろうか。
1,2着は騎手の経験の差が出たのかもしれないが、3着のステラヴェローチェはダービー初騎乗の吉田隼人の騎乗だった。意外なことにダービー初騎乗である。馬自体人気がなかったので気楽に乗れた面もあると思うが、ダービー初騎乗の騎手を背に皐月賞に続いて3着に好走した。
印を入れた馬で最上位だったのは5着のサトノレイナス。3コーナーで外から来られて馬が行く気になってしまい、早めに先頭に立ったが、これが最後に響いて掲示板確保がやっとだった。
外れ
着 | 枠 | 馬 | 印 | 馬名 | 性齢 | 騎手 | 斤量 | タイム | 着差 | 通過順 | 上3F | 人 | 単勝 | 体重 | 増減 | 調教師 | 賞金 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 5 | 10 | シャフリヤール | 牡3 | 福永祐一 | 57 | 2.22.5 | 07-07-11-09 | 33.4 | 4 | 11.7 | 444 | -4 | (栗)藤原英昭 | 20000 | ||
2 | 1 | 1 | エフフォーリア | 牡3 | 横山武史 | 57 | 2.22.5 | ハナ | 03-04-09-09 | 33.4 | 1 | 1.7 | 510 | +6 | (美)鹿戸雄一 | 8000 | |
3 | 6 | 11 | ステラヴェローチェ | 牡3 | 吉田隼人 | 57 | 2.22.7 | 1 1/4 | 13-14-13-12 | 33.4 | 9 | 40.2 | 488 | -12 | (栗)須貝尚介 | 5000 | |
4 | 7 | 13 | グレートマジシャン | 牡3 | 戸崎圭太 | 57 | 2.22.7 | ハナ | 13-11-09-09 | 33.6 | 3 | 11.1 | 478 | +4 | (美)宮田敬介 | 3000 | |
5 | 8 | 16 | △ | サトノレイナス | 牝3 | C.ルメー | 55 | 2.22.7 | ハナ | 07-04-02-02 | 34.0 | 2 | 5.1 | 474 | 0 | (美)国枝栄 | 2000 |
6 | 7 | 14 | ◎ | タイトルホルダー | 牡3 | 田辺裕信 | 57 | 2.23.1 | 2 | 02-02-06-04 | 34.3 | 8 | 30.4 | 464 | +2 | (美)栗田徹 | |
7 | 4 | 8 | ヨーホーレイク | 牡3 | 川田将雅 | 57 | 2.23.1 | 頭 | 09-08-11-12 | 33.8 | 6 | 18.4 | 504 | 0 | (栗)友道康夫 | ||
8 | 4 | 7 | グラティアス | 牡3 | 松山弘平 | 57 | 2.23.1 | ハナ | 05-02-02-02 | 34.4 | 10 | 43.2 | 496 | -4 | (美)加藤征弘 | ||
9 | 3 | 6 | バジオウ | 牡3 | 大野拓弥 | 57 | 2.23.3 | 1 1/4 | 05-08-13-12 | 34.0 | 15 | 122.8 | 466 | +2 | (美)田中博康 | ||
10 | 6 | 12 | ○ | ワンダフルタウン | 牡3 | 和田竜二 | 57 | 2.23.3 | クビ | 10-08-06-05 | 34.4 | 5 | 16.2 | 470 | +4 | (栗)高橋義忠 | |
11 | 2 | 4 | レッドジェネシス | 牡3 | 横山典弘 | 57 | 2.23.6 | 1 3/4 | 17-17-17-17 | 33.7 | 13 | 57.0 | 490 | +2 | (栗)友道康夫 | ||
12 | 5 | 9 | ラーゴム | 牡3 | 浜中俊 | 57 | 2.23.7 | クビ | 10-11-13-12 | 34.5 | 16 | 186.5 | 506 | -10 | (栗)斉藤崇史 | ||
13 | 2 | 3 | タイムトゥヘヴン | 牡3 | 石橋脩 | 57 | 2.23.8 | 3/4 | 10-11-16-16 | 34.3 | 17 | 253.8 | 472 | -6 | (美)戸田博文 | ||
14 | 1 | 2 | ▲ | ヴィクティファルス | 牡3 | 池添謙一 | 57 | 2.24.3 | 3 | 03-04-06-05 | 35.4 | 14 | 95.6 | 474 | -4 | (栗)池添学 | |
15 | 8 | 17 | バスラットレオン | 牡3 | 藤岡佑介 | 57 | 2.25.4 | 7 | 01-01-01-01 | 36.8 | 12 | 53.9 | 484 | +2 | (栗)矢作芳人 | ||
16 | 3 | 5 | ディープモンスター | 牡3 | 武豊 | 57 | 2.25.7 | 1 3/4 | 13-14-04-05 | 36.8 | 7 | 23.7 | 454 | +10 | (栗)池江泰寿 | ||
17 | 8 | 15 | アドマイヤハダル | 牡3 | M.デムー | 57 | 2.26.0 | 1 3/4 | 16-14-04-05 | 37.1 | 11 | 45.3 | 482 | 0 | (栗)大久保龍 |