’１８ 中山大障害観戦記

2018年12月22日

　今年も例によって中山大障害を観に行った。これで24年連続暮れの大障害観戦である。

　中山競馬場に着いたのは大障害の一つ前のレースが終わった後だった。船橋法典から中山入りしたこともあって、駅から遠い正面スタンドではなく内馬場の大生垣で観ることとした。中山大障害は年に２回しか使われない大障害を間近で見れる内馬場で観るもの見応えがある。レースの全貌を観るのには正面で観たほうが良いのだが、日本一ハイレベルな障害を間近で見るのも迫力があって良い。（この部分、昨年の観戦記と全く同じ文章（笑）。今年も中山到着がギリギリだった。）

　予想のページでも書いたが、Ｊ・ＧＩ５連勝中の障害王者オジュウチョウサンが出走してきたら文句なしの本命とした筈だった。しかし、残念ながら翌日の有馬記念に出走することとなったのでここには出てこない。メジロパーマーレベルならまだしもあれだけの馬を平地に転向させるのは正直もったいない。もし、障害と平地の両方でＧＩを獲れたらそれはかなりの偉業となるが、あれだけ障害界を盛り上げた馬が平地に回るのは寂しい限りである。

　オジュウチョウサンがいないとなれば、オジュウチョウサンが台頭してくる前までは障害王者でありその後もほとんどＪ・ＧＩ２着だった（一度だけ３着あり）アップトゥデイトの出番である。３年前はＪ・ＧＩ春秋連覇の名馬であり、その後も馬券圏内からは外れていない。特に昨年の中山大障害はオジュウチョウサンとの激しいマッチレースとなり着差もわずかで３着以下に圧倒的な着差を付けた。歴史に残るような名レースだった。今回は目の上のたんこぶだったオジュウチョウサンが出走してこないのでこの馬にとってチャンスである。３年ぶりのＧＩ勝利に期待して本命とすることとし、アップトゥデイト頭の三連単とした（流した相手や買い目はこのレースの予想を参考）。本当はオジュウチョウサンに勝ってのＪ・ＧＩ制覇を見たかったが…。

　さて、レースである。年に２回しか使われないＪ・ＧＩ用の厳かなファンファーレが流れるが、内馬場の私のいる場所では微かにしか聞こえなかった。

　大生垣の前では道中の様子がわからないので、スマホでクリーンチャンネルWebをつける。ミヤジタイガがハナを切った様だがしばらくしてアップトゥデイトがハナを奪う。そのアップトゥデイトを先頭にして馬群は進んで行く。やがて下って上るバンケットを登ってアップトゥデイトの白い馬体を先頭にして馬たちが姿を現した。まずは大竹柵をアップトゥデイトが無事飛越。他の馬たちも全馬無事飛越した。場内からは拍手が沸き起こる。

　そこからさらに半周。周ってくるまでは馬たちの姿は見えなかったのでスマホの画面で中継を観ていた。やがて、アップトゥデイトが姿を現して、私の目の前にある大生垣を飛越。他の馬たちも続々とやってくる。大生垣のすぐ近くで見ているので馬の脚が障害にぶつかる音もはっきりと聞こえる。前場無事にクリアした。場内からはまたしても拍手。

　そこからモニターの場所に移動して、その後はモニター越しにレースを観ていた。アップトゥデイトは相変わらず逃げているが、３コーナー付近の勝負どころでミヤジタイガやニホンピロバロンに抜かれた。それで白浜騎手は慌てたのだろうか？最終障害を飛び越えて着地した時に落馬してしまった。場内からは大きなどよめきが起こった。私も一瞬何が起こったか分からなかったのだが、周りの人の声を聞いてアップトゥデイトが落馬したことを知った。ずっとコンビを組んでいた林騎手が引退し、別の騎手で臨む初のＪ・ＧＩ。襷コースにある２つの大障害は難なくクリアしたが、最後の障害で終わってしまった。もし、林騎手が乗っていたらここはどう乗ったのだろうか？

　私の馬券はすでに終わってしまったが、レースは直線に差し掛かって続いてゆく。オジュウチョウサンの主戦騎手である石神騎手が騎乗するニホンピロバロンが抜け出したが、タイセイドリームが並びかけようとする。この２頭のマッチレースだ。結果はニホンピロバロンが粘りきって石神騎手はこのレース３連覇を達成した。今年の中山グランドジャンプで３着だった馬である。その時の勝ち馬オジュウチョウサンは出走せず。２着馬アップトゥデイトは落馬。そして３着馬が暮れの大障害を制した。オジュウチョウサンがいなくても石神騎手が中山大障害を制した。２着はタイセイドリームとアップトゥデイトと同世代の８歳馬によるワンツーだった。

　その後もアップトゥデイトを除く馬が完走した。ここで観客から暖かい拍手が贈られる…のが通例なのだが、少なくとも私の周りでは拍手は起きてなかった。正面スタンドではどうだったのだろう？そこで起こっていたのは１番人気のアップトゥデイトが落馬したことによるどよめきだった。

　アップトゥデイトは障害飛越の際に外傷を負ったらしく、レース後はその白い馬体の一部を赤く染めるように血を流していた。血まみれの姿がネット上にアップされているのを見て心配だったが、人馬ともに無事だったようなので一安心である。

　勝ったニホンピロバロンは、ある意味気の毒である。この大障害は後年「ニホンピロバロンが勝った大障害」ではなく「アップトゥデイトが落馬した大障害」としてファンの記憶に残るだろうから。しかし、完走するだけでも大変なレースである中山大障害を制した馬として、その名を記憶に刻んでおくようにしたい。